第86章

田中尚哉は事情が飲み込めないまま、祖父の前で棒立ちになった。

「おじいちゃん……俺、何か悪いことをした覚えは――」

言い終える前に、田中爺さんが分厚い写真の束を、ばさりと尚哉の顔へ叩きつけた。

床に散った写真は、目を背けたくなるほど生々しい。

田中尚哉と加藤柚奈のベッド写真。二人の「取引」を示す送金記録。尚哉が柚奈に買い与えた部屋の名義と金の流れ。

そして――加藤柚奈の妊娠証明。

尚哉の顔から血の気が引き、次いで、陰るように沈んだ。

田中爺さんは声を荒らげない。だからこそ、空気が重く押し潰してくる。

「……今なら分かるか。自分が何をしでかした」

尚哉は写真を一枚ずつ拾い集め...

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